2006年2月26日

ジョージ・クルーニー主演の映画SYRIANAは、9月11日事件や中東の安全保障、諜報機関に関心がある人にとっては必見でしょう。米国政府のサウジアラビア政府との癒着や、政財界の癒着、貧しい若者たちがアル・カイダのテロリストに仕立て上げられていく過程などを、いささか単純化されているとはいえ、映画として再現したことには拍手を送りたいと思います。それもそのはず、元CIAのRichard Baer が書いたSee No Evilが下地になっており、本人がアドバイスをしているのです。主人公がCIA内部でFBIの捜査を受けるくだりは、Baer自身がサダムフセインの暗殺計画に関与した疑いで、FBIの捜査を受けた事実が元になっています。アラブ人がきちんとアラビア語を話すところも、ドキュメンタリータッチで好感が持てました。諜報機関の専門用語でBlowbackというのがあり、諜報機関が行った工作が自国に対して悪い結果をもたらすことを意味していますが、この映画の冒頭と最後ではみごとにBlowbackを図式化していました。米国がアフガンゲリラに供与した携帯式対空ミサイル「スティンガー」を、CIAが必死で買い集めていた事実を思い出しました。